T.Iさんち(日光市)No.0096
COMODO建築工房
籠るを楽しむ等身大の家
おうちデータ
- T.Iさんち(日光市)
- 築年数…2ヶ月
- 延床面積…13.5坪
- 好きなインテリアは?
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質感のいいものが好きですね。見た目・手触り・細かいところまで、自分の暮らしに馴染むかどうか…すべてが自分のイメージに合うものにピンときます。でも、家づくりにまつわるインテリアは、すべて建築士さんにお任せでした。
- 好きな雑貨屋さん・家具屋さん
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好きなのですが、最近は時間もなく、そういうところには行っていませんね。
- 参考にした雑誌
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信頼する建築士さんにすべてお任せしましたので、雑誌・インターネット類は全く見ませんでした。さすがに建てた家1軒くらいは見ておいてほしいと言われ、1軒だけ見に行きましたが(笑)
- 家を持つきっかけは?
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私は自動車修復工場を営んでいるのですが、工場を持てたことで満足しており、持ち家など全く考えていませんでした。あるときうちのお客さんであったライフプランナーから、住宅ローンも11疾病保障のものがあると聞き、可能性はあるのかなとふと思ったのです。彼がシミュレーションをし、身の丈に合った家なら持てると提案してくれたので、そこから、夫婦二人の終の棲家を建てようと一気に気持ちが前向きになりました。
- 購入を考え始めたのは誰?
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私ですね。そういえば随分昔に妻が家を欲しいな、とつぶやいたことがあったような気もしますが(笑)。工場の経営は常にリスクと隣り合わせですし、私は家に帰っても食事をして寝るだけの生活だったので、彼女は諦めていたようです。突然私が家を持つことを真剣に考え出したので、妻はびっくりしたのと同時にとても喜んでいましたね。
- なぜ、その施工会社に決めたのか?
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実はこの家を設計してくれた建築士さんは、元々私の自動車修復工場のお客さんだったんです。彼はまだ若いのですが、その人となりを知り、根っこにあるポリシーや真摯な態度は尊敬に値するもので、家づくりを任せるなら彼にと心に決めていました。私からは、日光連山を家の中から望めること、浴槽で足を伸ばせること、その2点だけを要望として伝え、後はすべて彼にお任せしました。
- お気に入りの場所は?
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う~ん、家全部ですね。大きい家だと、ポイントになるのかもしれませんが。我が家は13.5坪しかないながらも、すべてが魅力的です。空間としての家が気に入ってるんです。そうそう、我が家にはたくさん「居場所」があるんですよ。掃き出し窓の窓辺に座る、腰窓にもたれかかる、和室に寝転ぶ…時間や気分で居場所を変えられます。小さいながらも、そのような場所があるというのは、すごく贅沢ですよね。
- もう1度家を建てるならどんな家にしますか?
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それは、建築士さん(彼)次第ですね(笑)。いわば、レストランに行って、シェフおまかせの料理を頼むようなものです。私はそのシェフを気に入って料理を食べに行くのだから、彼がその瞬間ベストだと思って提供してくれるものを食べたい。そのためには予算だけを伝えて、あとはお任せすることです。もう一度家を建てることがあったとしても、やはり今回と同じようにそうするでしょうね。
- これから家を建てる人へのメッセージは?
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自分が心底信頼できる工務店さんを見つけ、真摯に向かい合うこと、それが何よりも大切だと思っています。本当に信頼できる建築士さんに出会えたら、あとはお任せするのが一番だというのが私の持論です。惚れ込んだ人が設計した家が建つ過程を見るのは、本当にワクワクするものですよ。
コンパクトな平屋は日常の動きが楽!
この家は、夫婦2人の終の棲家としてプランしてもらいました。13.5坪の平屋建てなのですが、食事の支度をするにも、雨戸を開けるにも、洗濯をするにも、すべての動線が短く、楽なのです。“Rabbit hutch(うさぎ小屋)”と名付けられたこの家は、その小ささゆえに、暮らしやすく、心休まる空間になっていると思います。
ミニマムな空間にも収納スペースはきっちり確保
キッチンの背面収納は、壁の厚みを利用して、そこにはめ込む形で設置、食器などが十分に収まる奥行が確保されています。小上がりの和室の段差には引き出し収納が設けられているので、衣類を収納しています。小さい家でも、必要なところに必要なものが収まるだけの収納があるので、不自由は何もありません。
コンパクトなキッチンに、冷蔵庫はもちろん、家電収納・食器収納のスペースもきちんと確保することができたのは、置き家具やメーカー品ではなく、寸法を細かく測って設計された造作の収納だからこそですね。
DVDデッキは壁の中に
テレビは壁掛けに、DVDデッキは壁の中に収納場所を設けて下さったので、我が家にはテレビ台というものがありません。収納の扉部分に、ガラス代わりに麻のロールスクリーンの生地を貼ってあるので、インテリアとして馴染んでいて、みなさんDVDデッキが入っていると知って驚かれます。この生地は赤外線を通すので、扉を閉じたままリモコンを使えるんですよ。
コンパクトな家にするには、家具も必要最低限にしなければいけません。このお宅の家具はダイニングセットのみです。使いやすさとインテリア性を妥協せずにDVDデッキの置き場を壁の中に作るとは…驚きの発想です。
トイレを個室にせず省スペース
我が家は、トイレとお風呂につながる洗面脱衣室が1つのスペースにあり、トイレはカーテンで仕切られているのみです。トイレを個室にしようとすると、通路の確保のために余計にスペースが必要になるという理由からですが、万が一介護が必要になったときも、狭い個室にしない方が使いやすいし、トイレからお風呂への移動もスムーズなんです。最初は少しそわそわしましたが、すぐに慣れました。
最初に見たときは驚きましたが、海外のバスルームではこれが一般的と聞いて確かにと思いました。日本の住宅の「常識」から抜け出した方が、暮らす人の今後に寄り添う間取りになることもあるのですね。
頭をぶつけることがあるけど…
和室の仕切り壁や、物干し場につながる掃き出し窓は、身長よりも低く、何度か頭をぶつけてしまいました。確かに不便かもしれません。でも、私はそれが不満ではありません。和室の籠り感を出すためだったり、リビングが視覚的にすっきりと広く見えるためだったり、理由があってそちらを優先してこの仕様にしたわけですから。不便を楽しむくらいの気持ちで暮らす方が人生豊かになりますよね。
「失敗はひとつもありません!」とおっしゃるお客様に初めて出会いました。柔軟な考え方ですべてを受け入れ、楽しく暮らされているご夫妻の様子を拝見し、この上なく幸せな家づくりをされたのだと感じました。
家を小さく!に尽きる
コストダウンと言えば、予算をお伝えし、それに合わせて家の大きさを最小限にしたこと、それに尽きますね。使う素材や設備などは、何も妥協をしませんでした。私が専門の自動車や他の工業製品でも「ダウンサイジング」という言葉が使われますが、決して質を下げるのではなく、無駄に大きくしないこと。すべておまかせでしたが、正しくコストコントロールをしていただきました。
キッチンや洗面台、収納はすべて統一感を持って造作され、使われる床板や壁材の素材にも高級感があふれ…上質さが凝縮されたこのお宅。何よりもコストダウンになるのは家の大きさだと、改めて教えられました。
家の中に籠れる空間を
小上がりの和室は、天井高が1.9メートル、茶室の躙り口(にじりぐち)を思わせる仕切り壁があり、この籠れる感じが、何とも落ち着くんです。子どものころ、なぜだか狭い押入れで遊んでいたあの感覚になるんですよね。我が家は家自体も小さいので、初めて入ったときからやけに馴染んで居心地がよかったんです。人は、巣のような場所を求めるのでしょうか。籠れる場所が家にあるっていいですよ。
実際にこの和室に上がらせていただいて、その居心地のよさに、家は「広々と」「開放的に」だけでは落ち着かないのだ、ということを実感しました。人間の「籠りたい」欲求を見事に満たしてくれる和室です。
「線」にこだわる
例えばリビングの窓の高さを揃える、とかキッチンの換気扇と窓の下端を揃えるとか…線を可能な限り少なくすると空間がとてもすっきりするんですよね。「美しい直線」にこだわっていますが、逆に直線が強くなりすぎないようにと、和室とキッチンの入口にはアールが施されています。そのバランスの良さが、家の品のようなものにもつながっているのかなぁと満足しています。
確かに…上品な木の色と、暖かい壁の白が作る線はとても美しく、こだわりが感じられます。収納はすべて造作されているので、お住まいになってからも、家具が増えてその美しい線が崩れるということがないのですね。
リビングの掃き出し窓は4変化
リビングの掃き出し窓には、外側から、雨戸・網戸・ガラス戸・障子、の4つをはめ込んでいます。どれを使うかで、部屋の明るさや雰囲気が全く変わるんです。私が特に気に入っているのは障子。光を通したときにできる影がとてもきれいなんですよ。家の中で光と影のコントラストを楽しめるなんて、すごく贅沢なことですよね。
私がとても素敵だと思ったのは網戸。網戸という言葉が合わないような風情があります。葦簀(よしず)を木枠にはめ込んだ魅せる網戸は、美しいだけではなく、風は通し、熱は遮断するので、とても機能的です。
インテリアはトータルでデザイン
出入り口や壁の出隅部分には、保護の意味でラワン材が誂らえています。これは、インテリア的なアクセントの意味もあるんです。家中の窓枠や収納扉の触れる部分などに同じ材質が使われているので、家全体のインテリアに統一感があるんですよね。それに、トイレのリモコンはLIXILの海外向け製品にするなど、小さなところにも気を遣い、家全体の調和を崩さないようにデザインされています。
このお宅は直線と曲線、白と色、光と影、使われる素材…それぞれのバランスがとてもよくて、それが居心地の良さにつながっています。家の空間としてのインテリアがデザインされるってそういうことなんですね。
Uchimise Photo
建築士にすべてお任せし、その出来上がりに心底満足しているお客様のお話は、私の中にあった「家づくり」の概念を覆すものでした。建築士がお客様の人となり、暮らし方、好みを知り尽くし、その上で最高の「住まい」を提供する…これは家づくりの究極のかたちかもしれません。お客様夫妻の度量の大きさと、すべてを委ねたいと思える建築士との出会い、どちらが欠けてもこんなに素晴らしい家には仕上がらなかったでしょうね。
レポーター:kage
せっかく家を建てるなら…と広い家を望む人が多い中、可能な限り小さくと建てられたこの家。動線が短くてラク、落ち着く、予算内で上質な素材を使用できる…など、小さい家にメリットはたくさんあるのですね!