熊さん家(栃木市)No.0099
君島建築
熊さんのすまい
おうちデータ
- 熊さん家(栃木市)
- 築年数…6ヶ月
- 延床面積…38坪
- 好きなインテリアは?
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インテリア、というのとは少し違うのですが、古民家の佇まいが好きです。白洲次郎・正子夫妻が終の棲家とした「武相荘」は建物だけでなく周りの木々や庭園も含め、まさに憧れですね。
- 参考にした雑誌
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住む・チルチンびと
- 家を持つきっかけは?
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2人でゆったり過ごせる家を持とうと、栃木県内を北から南まであちこち土地を探していました。土地と言うよりは自分たちのイメージする家を建てられる環境を探していたとも言えますね。歳をとってからも不便でないよう、駅や市街地との距離も考慮し、なおかつ自然あふれる場所。やっとそんな土地に出会えたので、家づくりにとりかかりました。
- 購入を考え始めたのは誰?
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夫婦2人です。自分たちが身を置きたい空間・環境のイメージは2人で共通のイメージができていましたから、その場所にさえ巡り会えたら、家を持ちたいと思っていました。
- なぜ、その施工会社に決めたのか?
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もともとこちらの工務店と交友があったのです。展示場やオープンハウスも見て家に関してもいろいろ情報は得ていましたが、やはり旧知の仲である工務店さんに依頼することに決めたのは自然の流れでしたね。誠実な仕事、柔軟な対応はよく知っていましたから。常に親身で細やかな対応をしてくれて、やはり間違いはなかったと思っています。
- お気に入りの場所は?
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この家、家のどこにいても窓から緑が見えるんです。それこそがまさに私たちがいちばん叶えたかったこだわり。家の外からの視線などもまったく気にならない環境なので、家にいる時は全ての障子や窓を開け放ち、自然を感じています。住むまで気づかなかったのですが、トイレの窓から富士山が見えるんですよ!緑を感じる空間全てがお気に入りの場所ですね。
- もう1度家を建てるならどんな家にしますか?
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今もすでにほぼ叶えてはいますが…森に佇むシンメトリーな白い壁の山小屋風というか…大きくは今とは変わらないのですが、玄関から土間で家の向こうまで突き抜けられたり、落ち着いた広い縁側があったり、多少あきらめた要素を盛り込んだ家にしたいですね。
- これから家を建てる人へのメッセージは?
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展示場やオープンハウスをみるのはもちろん良いのですが、それとあわせて我が家が参考にしたのは「◯◯家住宅」のような古くからの建物。新しいもの、古いもの、いろんな建物を知る中で、自分たちがいちばん心地よい空気感・雰囲気を知ることができると思います。まずは自分たちがどんな暮らしをしたいか、イメージをはっきり持てれば、家づくりの方向は間違えないと思いますよ。
基本的な設計は自分で
暮らし方のイメージが具体的にあったので、基本的な平面図は自分でまず書き起こし、それをプロの建築士さんに強度や法律の視点からブラッシュアップしてもらいました。ほんとはもっともっと窓だらけにしたかったんですけどね(笑)
洗面室はゆとりある広さに
洗面台はゆったりとしたものを置きたい。タオルや日用消耗品を入れる収納、普段使いの洋服の収納もここにしっかり作りたい。と思っていたら、こんな広さになりました。普通のお宅よりは広めかもしれませんが、我が家にはちょうどよい広さなんですよ。
大きな物干しセットを置いても余裕の広さの洗面室。軒先に物干し竿は取り付けておらず、基本的に室内干しとのことでしたが、風通しの良さと杉や漆喰の調湿効果のおかげで、まったく湿気とは無縁の空気でした。
造作の収納で家じゅうすっきり
何を隠そう、この家で買った家具は、コタツだけなのです。収納は全て大工さんや建具屋さんに作り付けでつくってもらいました。こちらにも全て杉材を使用。収納扉も取っ手をつけないデザインにしたので、統一感抜群だし、すっきり見えます。
潔いほどに無駄なものがなく、飾り物などもごくわずかなお宅。と思ったら、食器はもちろん電子レンジも収納の中に収まっていました。収納するものに合わせて作る造作家具だからこそ成せる技ですね。さりげなく飾られた野の花が引き立つ余白のある空間が素敵でした。
細部まで妥協しない設備選び
システムバス・システム洗面化粧台・サッシ・シャッターボックス…と、様々なアイテムを東京のショールームまで何度も足を運んで吟味しました。やはり現物を見ないと納得できなくて。おかげでどれもデザイン・使い心地とも満足できるものを採用することができました。
全ての物を自分で納得して選ばれていたご夫妻。シャッターボックスという普段なかなか気にしない部分までこだわりぬいた物選びのおかげで、満足度の高い仕上がりとなっているようです。
思ったよりも飛び散る灰
薪ストーブの周辺だけは、壁・床とも大谷石を貼ったのですが、床の大谷石の部分はもう少し広くしても良かったかも。薪を入れる時に思ったより手前に灰もこぼれるし、木の床の部分の表面も熱をもってるように思います。
リビングの素敵なアクセントにもなっている薪ストーブ周辺の大谷石の床と壁。見た目のバランスと使い勝手のスペースはまた違う部分もあるのかもしれませんね。
北側の軒の深さ
南側はたっぷりの軒の奥行きをとり、陽射しのことや雨による外壁の痛みも考慮したのですが、北側はそれよりも随分浅くしてしまいました。そうするとやはり、雨が外壁にあたり、木製の外壁の痛みが早いかもしれないな…と思っています。どうせなら北側も奥行きを深く作ればよかったかな。
塗替えや補修のしやすさを考慮して杉板の外壁を選んだというお施主さんなので、こまめに手をかけることで、カバーできそうでした。
できる作業は自分たちで!
家の中の漆喰部分は全て、自分たちで塗りました。外壁や軒天の杉板の塗装もDIYです!とくに漆喰は塗る厚みやコテのすべらせかたにムラがありますが…それも愛着がわくからいいかな(笑)庭まわりも、砂利を敷いたり木を植えたり、できるところはなるべく自分たちでやりました。
家じゅうが杉と漆喰でできていたので、面積もかなりの広さ!でも作業は楽しかったそう。自分でやった工事は補修も自分でできる見通しがたつから、ちょこちょこ自分で補修していきたいというご主人。それもコストダウンにつながっているなと思いました。
キッチンは機能を減らして
水廻り機器は、使い勝手も考慮してメーカーのものを選んでいます。キッチンは、扉材などは極力シンプルなものを選び、使わないと思う機能は勧められてもとことんカット。食器洗浄乾燥機もないけれど、もともと洗ったらすぐにキレイに片付けていたい性分なので、キッチンのカウンターがごちゃごちゃしていることはありませんね。
炊飯器なし、トースターなし、電子レンジは一応あるけど扉の中…。そんな熊さん宅には最新機器は無用のようでした。自分の手間を惜しまない、シンプルな暮らしこそ、コストダウンに繋がるのですね。
素材を統一することでコストダウン!!
我が家はすべての部屋の床・壁・天井、そして外壁に至るまで、ほとんどの所に同じ県産の杉材を使用しています。一斉に大量に仕入れることで、通常よりかなり安い価格で手に入れました。だから、これだけの面積を無垢の木で仕上げられたのですよ!
漆喰や無垢の木で統一したいけど、コストダウンの為に2階はクロスで…という話はよくありますが、逆に使う面積を広くすることがコストダウンに繋がるとは眼から鱗。工務店さんとの連携の良さを感じました。
将来かかるリフォーム費用をコストダウン!
リビングの床を一部畳にしました。「コタツで寝る」のが好きだから床にするか畳にするか悩んだんです。一度フロアーで仕上げたところを一部畳にするのは大変だけど、畳の部分を床にするのは簡単でしょ?なので、最初は畳にしました。
夕飯をのんびり食べて、気の済むまでコタツでゴロリ。これぞ日本人のくつろぎですね!でもいつかはテーブルが楽と思う日がくるかも。そんな時には工事方法をあまり悩まずに木の床にできるという、先を見越したコストダウンでした。
庵のような和室
玄関を入って右にある和室。実はこの部屋、玄関の土間からしか出入りできないんです。家の中で移動するにも一度履物を履かなくては行けない。何度も工務店さんや建築士さんから「繋がる通路を作ろう」と提案されましたが、ここは譲りませんでした。独立した、庵のような部屋にしたかったんですよね。コーナーをサッシにしたので、四季折々の森の木々を立体的に感じられます。
同じ屋根の下にありながら、そこはまさに離れのような空間。面倒ではない?と思いましたが、そこに身を置いて納得。日常から離れ、庭を眺めたり本を読んだりしたいような、そんな静かな空気が流れていました。
扉はすべて引き違い戸
玄関からトイレに至るまで、我が家の建具は全て「引き違い戸」にしてあります。家にいる時はほぼ全ての建具、サッシを開け放っていたいので、このスタイルにしました。しかも障子。カーテンやカーテンレールのほこりが苦手なのです。障子は年末に自分で貼り替えればまたまっさらな気分になれて、そこも好きなポイント。障子の桟のタテヨコの間隔までこだわりぬきました。
引き違いにしたもう一つの理由は、将来車いすなどにもしなったら、両方はずせば大開口になるからなのだとか。空気の流れからもしもの介護の可能性まで考慮に入れる、すばらしい案ですね。
跳ね出し梁のダイナミックさ
平屋の我が家は、リビング天井は梁をあらわにした設計。しかも、梁が途中で切れているような「跳ね出し梁」がかっこいいでしょ?杉板張りの天井と相まって、ダイナミックな雰囲気がお気に入りです。
このような組み方の梁は初めて拝見しました。これで小屋組を支えていることがなんとも不思議。リビングがぐっと遊び心のある空間に仕上がっていました。
全ての窓から緑がみえる暮らし
家のどこにいても、窓から緑が見える暮らしがしたかったんです。そのために何年もそれが叶う土地を探しました。窓を開け放ち、緑を感じる暮らしはまさに求めていたもの。最高です。
山を背にし果樹園が眼下に広がる立地に建つ、熊さんのお宅。本当に全ての窓から山の緑や果樹園、遠くの山が見え、四季や自然を感じる暮らしは、妥協しないで探し続けた理想の土地だからこそ得た宝物なのでしょうね。
Uchimise Photo
緑に囲まれ、全て引き違いの窓や障子が立て込まれているお宅。開け閉めすることで、空間を優しく開放したり、仕切ったり、風を取り入れたり、障子を通したやわらかい光でほっとしたり。風・光・家族との距離を自在に調整し、その時々で心地よい居場所を得られる住まいは、夫婦お二人のまさに終の棲家といえる場所。年月を経て、杉の建具や床がいい色に馴染んできたとき、さらに趣が増し、もっともっと自分たちらしい家へと育っていくのでしょうね。
レポーター:yumi
緑の取り入れ方や風の抜け方まで自分たちの住まいのイメージを持っていたご夫妻。それをとことん理解して汲みとってくれる工務店さんと建築士さんに出会えたおかげで、イメージ通りでかつ耐震性などにも考慮した家が建てられたのでしょうね。